発達障害の人に多い睡眠の悩み 原因と対策を考えますvol.10-1 上島医院院長 渥美正彦 医師

HOME医師と語る 現代の発達障害発達障害の人に多い睡眠の悩み 原因と対策を考えますvol.10-1 上島医院院長 渥美正彦 医師

シリーズ『医師と語る 現代の発達障害』

渥美 → 上島医院 院長 渥美正彦 医師
鈴木 → 株式会社Kaien 代表取締役 鈴木慶太

YouTubeでもご覧ください。

今回のインタビューは「睡眠専門医 渥美正彦」のYouTubeチャンネルでも見られます

「マスオさん院長」です

鈴木) 気になるところから聞いていっていいでしょうか?そもそも上島医院は先生が立ち上げたところではないが、先生が院長として入られているということなのでしょうか?

渥美) 歴史的には長いクリニックで今年開設40年(取材時 2021年)になります。先代が上島哲男と言いまして昨年亡くなったのですけれども、要は現理事長である上島玲子の父親なんですよね。後を次いで上島玲子が理事長をしていますがそれの旦那にあたるのが僕ですね。なのでいわゆるマスオさんと言われるやつですね。

鈴木) 上島真以子先生もいらっしゃって、妹さんなのかなぁと思ったので、一族でしているということは変わらないのですね。

渥美) そうですね。非常勤の外部の先生はずいぶん増えたので、相当大所帯になってきたのですが、メインを張っているのは我々3人ですね。

鈴木) 大所帯になっているということは最近色々増えてきたということですよね。元々どういうところがお得意のクリニックで、最近どのあたりが増えてきているのですか?

渥美) 元々はよくある町の精神科診療所だったんです。理事長が一人いて、周りは看護師さんと事務員だけという形で外来診療だけをしている形だったんですけれども、平成8年(1996年)に医療法人成りをしました。それにあわせてデイケアを開設したんです。その後、デイケアを併設した精神科クリニックという形で十数年やっていたようです。私が平成16年(2004年)に大学から戻ってきてたまたま睡眠をメインに診療していたということで、睡眠を専門に取り組み始めました。

鈴木) この数年で新たに行っているプログラムが増えているということですか。

渥美) 増えたというよりも来られる患者さんの層がずいぶん変わってきたという感じです。元々、デイケアというとほぼ統合失調症の患者さんが中心だったのですが、統合失調症の患者さんが軽症化してきたこともあって少なくなってきて、一方で発達系だったり、不安障害、双極性障害の方だったり、知的グレーゾーンで適応障害を起こしたりした方が増えてきました。また睡眠障害という二次障害の仮面をかぶって、実際には発達障害があったり、双極性障害があったりという形の方が増えてきました。母数が増えてきたというのと、守備範囲が変わってきたというのが要因ですね。

3類型でみる 睡眠関係でクリニックを訪れる人 まずは不眠

鈴木) 心の変調がすべて睡眠に出るというぐらい、睡眠が不調になった方を診ると様々な障害が見えてくると思うのですが、先生はどういう方を診ることが多いのですか?

渥美) 睡眠全体でみると、睡眠時無呼吸症候群が一番多いのですけれども、睡眠時無呼吸症候群は診てくれるところが他にもたくさんあります。精神科で睡眠を診ている中で一番多いのは朝起きられない人ですね。次が眠くて困っています。その二つがとても多いです。

発達障害により関心を持ち始めたのは、朝起きられないとか、眠いとかおっしゃっている中に、発達の偏りが同時にある人が多い。仮に朝起きられるようになったとしても、発達特性で生活の足を引っ張られるパターン。あるいは日中の特性の問題を一つずつクリアしていったとしても、まともに朝起きられない、夜も眠れないということで社会生活がおくれないというパターンもあります。睡眠・発達どっちの側面もある方がいるので、睡眠専門医としては発達障害がある方に力を入れざるをえないところがありますね。

鈴木) 発達障害の中でも、起床や睡眠などの生活リズムに全く困っていない方も時にいますが、それ以外はおおむね睡眠に課題がある方が多い。「発達障害ニアリーイコール睡眠障害」という気がしています。なので、発達障害が絡まない睡眠障害の方というのがどういう人かがわからないのですが…教えて頂けますか?

渥美) 睡眠の病気は80種類以上あります。そのうち発達障害の傾向が無い、あるいは目立たず困っていない方の場合は、圧倒的に多いのは不眠です。しかし不眠は睡眠障害を専門に診ていますと標榜していなくても、精神科や心療内科ではほとんどの先生が上手下手はあると思うが診てくださると思うのです。

二つ目は睡眠時無呼吸症候群。日本人に滅茶苦茶多いですね。発達障害の方も睡眠時無呼吸症候群で苦しんでいる方がおられる。三番目に多いのは過眠(常に眠い)という問題ですね。過眠になってくるとほとんどの場合、睡眠障害クリニックじゃないと相手にできないと思います。

鈴木) 不眠は緊張が高い状態のイメージなのですが、正しいですか?

渥美) 不眠症は3つの要素の積み重なりで形成されるという考え方があります。一つ目は背景にある因子。その方の素因ですね。今おっしゃった緊張感が高い低いというのはストレスに敏感かどうかだと思うのですけれども、敏感な方だったらちょっとしたことで眠りにくくなります。

そこに二つ目の要素としてイベントが加わってくるわけですね。危険のサインが加わってくると寝ている場合じゃなくなってきて、急性不眠になるわけですよ。一般的には危険が去るとまた眠れるようになってくるのですが、三つめの維持因子というのがあり、こじらせるという因子がかぶってきます。普通の状態だったらまた眠れるようになるんだけれども、そこで良くないことをし始めることが多いんですよね。良かれと思って、はやく布団に入ったらはやく寝られるんじゃないかとか、昼間だるいので外に出ずに過ごしてみるとか。

背景因子と増悪因子と、最後の維持因子という3つが積み重なって、最終的にはこじれてしまっている不眠の方がクリニックに訪れることが多いですね。維持因子の中にはうつ病を合併している人などもいらっしゃいますね。

日本人はやせ型でも注意 睡眠時無呼吸症候群

鈴木) 睡眠時無呼吸が二つ目でしたっけ?

渥美) はい。日本人はぞろぞろいます。日本人が多いのは顎が小さい、顔が平たいからですね。テルマエ・ロマエという映画で日本人のことを「平たい顔族」と言っていました。顔がペタンコなので、あごの骨で喉・気管を押しつぶすという構造になってしまっている方が多いので、ちょっとしたことで喉が狭くなって、寝ると完全に器官がつぶれてしまって呼吸が出来なくなる。睡眠時無呼吸症候群は不眠にも過眠にも影響します。

鈴木) ただし睡眠時無呼吸症候群は物理的なこともあって。

渥美) そうですね。本来内科の仕事ですね。精神科じゃなくてもよいというお話しだったと思います。

鈴木) 私もそうだと言われることが家族にあって…。横を向いているとか結構気を付けているのですけれどもね。

渥美) ですね(笑)。そうだと思いました。顔面診断ができるので。みていると、ああ、あれかな、って。人の話よりも顔を見ている事もありますね…。

鈴木) どのあたりがチェックポイントなんですか?

渥美) 顔の上顎の発達が弱めかな、後ろに引っ込んでいるのではないかな?とそういうところですね。日本人に生まれているというところだけで、痩せていても、不利に働くことがありますね。

発達障害に多い過眠の悩み

鈴木) 三つめは発達障害に多い過眠だと思うのですが、どういう背景の方が多いのでしょうか?

渥美) まずADHDの特性は、眠気が背景にあって起こっている困り感がかなりあると考えていたほうが良いと思います。実際にADHDの治療はコンサータなどの精神刺激薬、眠気覚ましですよね。つまり眠いということが一部分、ワーキングメモリーを低下させたりとか、集中力を低下させるとか、そういうものに影響を与えている可能性が非常に高いですね。

過眠症にはナルコレプシーという病気もあります。調査の中にはナルコレプシーの3~4割の方はADHDも合併しているという研究報告もあるので、発達特性の中でも不注意を基本に持ったり、衝動性を持っていらっしゃる方は睡眠の障害も併発していて眠くなっている可能性が高いと考えられますね。

鈴木) ADHDの特性の中に、睡眠の難しさが因子としてあるというぐらいなのですか?

渥美) あると考えたほうが良いと思っています。一応僕の場合には、睡眠時無呼吸症候群も一応聞くことにはしています。小児期にはもっていなくても、成人の発達障害の方が途中で睡眠時無呼吸症候群を合併して眠気や認知機能の低下が一見するとADHDの特性の一つのように見えたり悪化させたりということもあります。

薬以外で睡眠専門医に頼れること

鈴木) ADHDが睡眠障害を潜伏させやすいとしたら、薬以外で対応できるのでしょうか?精神科に通ったときにどういうヘルプを求めればよいですか?

渥美) お薬以外で言うと、睡眠衛生指導が一番大事だと考えています。そこはADHDの方は本質的にかなり苦手なところですね。例えば一日のスケジューリングをしたり、睡眠の記録を付けたり、活動記録を付けたりです。ADHDの方は忘れずにし続けることが苦手なことが多いのですが、なるべくIT機器などを使って、スケジュールを決めていく。何時に寝て何時に起きるをある程度決定します。そして睡眠に良くないこととか、良いことを一緒に考えていって、良くない部分を減らし、プラスの部分を増やす。過眠がある方はお昼寝が効果的なのですが、どのタイミングで昼寝をすると考えていない方も多いのですね。そういうことを相談して決めていったりしています。

鈴木) 先生にお会いするので昼寝の話についてTwitterでアンケートをとっておいたのです。発達障害の人でどのぐらい昼寝しているのかを聴いたところ、働いていない方を除いて、毎日昼寝31%、時々27%、昼寝をしない派は42%でした。

渥美) もっと昼寝しているかと思いました。

鈴木) そうですよね。私も障害者雇用の支援の現場だと就労移行支援の事業所でも、定着支援に行っても、結構みんな寝ているな、という風に思うのですね。先生、先ほどいつ昼寝するかもアドバイスするとおっしゃっていましたが、一般的に昼寝に関してどういうアドバイスをするか教えて頂けますか?

渥美) 一般論としてはなるべく15時までで、昼寝は30分間までとお伝えしています。夜の睡眠に悪影響を与えないためです。ただし眠気が強い人向けには、これから寝たら本当にまずい、社会的な地位が落ちるとか、その予定の手前の15分間で、5分でも10分でも目をつぶっておきましょうと言っています。そのやり方をするとそのあと寝落ちしなくて済むので、眠気が強い人の場合はそのタイミングでしてもらっています。

後編もぜひお読みください

後編はこちらから。思春期の睡眠障害。発達障害のわかる睡眠専門医は何故少ない?居眠りは睡眠の問題に気付くきっかけになるなど、さらに興味深いお話しを伺っています。

 

渥美 正彦 医師

上島医院 院長。大阪市立大学医学部卒業。大阪警察病院(神経科)国立病院機構やまと精神医療センター(精神科)馬場記念病院(精神内科)近畿大学医学部付属病院(神経内科)を経て平成16年6月より上島医院に入職。平成17年6月より医院併設南大阪睡眠医療センター長。平成22年4月院長就任。

専門領域)精神医学一般、睡眠医学、認知症、神経内科学一般
認定資格)日本精神神経学会認定精神科専門医、日本睡眠学会認定睡眠医療認定医、日本老年精神医学会認定老年精神医学専門医、国際認定睡眠検査技師、米国認定睡眠技師、精神保健指定医

上島医院

こころ・睡眠 総合クリニック(精神科・内科・神経内科・物忘れ・発達検査)
南大阪睡眠医療センター、精神科デイナイトケアセンター、発達障害専門プログラム
最寄り:南海高野線 金剛駅

http://ueshima-iin.com/

シリーズ 医師と語る