仕事終わりに診察 多様な発達障害の方が通うクリニック

vol.9 西梅田こころとからだのクリニック 西澤 弘太郎 医師
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シリーズ『医師と語る 現代の発達障害*』

西澤 → 西梅田こころとからだのクリニック 西澤 弘太郎 医師
鈴木 → 株式会社Kaien 代表取締役 鈴木慶太

仕事終わりにクリニックを目指して

鈴木)当初から発達障害の方のためのクリニックなのですか?

西澤)今年で6年目ですが、実は当初も今も発達障害を専門にというわけではありません。私はもともと内科医・産業医をしていたのですが、うつになったり精神的に苦しくなっても、働いている人が夜間に行けるクリニックがほとんどないと感じていました。ですので自分で開院してみようと思ったのですね。今もその方針に変わりなく診察が23時近くまでなることもあります。

鈴木)3年前にKaienの事業所を関西で初めて設立する前に「クリニックもうで」をしたのですが、大阪で発達障害を診ているクリニックを探したら本当に数えるほどしかなかったです。

西澤)はい。当時は少なかったですね。「発達障害の方を診ます」というと、それだけでたくさん患者がいらっしゃいました。その後、大阪でも発達障害を標榜するクリニックが増えてきていますが、それでも当院の患者さんは発達障害の方が多いです。ニーズは依然、大きいのでしょうね。

鈴木)若い方が多いのですか。

西澤)いいえ。働きながら通われるクリニックという性格上、どちらかというと中高年のほうが多い印象があります。また一人暮らしの方も多いです。地元に仕事が無くて大阪に出てきて働いているけれども、悩みを抱えながら我慢している、相談者や家族が周りに少ない方というのが特徴ですね。

変わる 発達障害の方の働き方

鈴木)働き方について質問させてください。Kaien大阪天六は首都圏に比べると一般雇用で内定を得る方が比較的に多いです。大阪の特徴なのでしょうか。先生は最近の動向をどうみていますか?

西澤)様々ですね。正確に調査したことは無いですが、障害雇用でオープンにして働く患者さんは増えている印象があります。成功体験が少ないとか、嫌な経験が多いとか、配慮される中で働きたいんだという人が増えている。障害者雇用に対する世間が認知度や評価も上がっていると思いますし。

一方で、小さな職場だと、障害者枠ではないものの、障害のことをオープンにする事例も増えていると思います。本人と社長や上長がお話しをされて、一定の配慮の中で働けている場合ですね。

ただし、大企業の場合は社内の制度などの壁があって、一般雇用のままで配慮を受けて働くのは難しい。かといって自社内で障害者雇用に簡単に変わるわけでもない。現場の人たちは対応に困られていて、本人も苦しくて、という状況が続いてしまい難しいですね。

鈴木)そういう場合はリワークというような形をとることもあるのでしょうか。

西澤)そうですね。大企業だと制度がしっかりしていますから。発達障害があり、正社員の場合だと、リワークに通って復職を目指す方が多いですね。でも残念ながら成功率は100%とはいかないのですが。

変わる 発達障害の方の働き方

鈴木)Kaienも大阪に2つ目の事業所を出しました。どういう事をKaienや福祉に期待していますか?

西澤)病名がわかって、発達障害のことがわかって会社で続けることもあれば、理解が難しくて仕事が困難になるケースもありますよね。クリニックは就労支援機関ではありませんので、職場についてトレーニングをするとかは難しい。クリニックでは自己理解とか障害特性の理解について支援が多くなりますので、それ以外の部分を連携出来たらよいですね。

また本人に理解してもらうだけではなくて、より企業に発達障害の理解を求める活動も必要です。そういったこともKaienさんが活躍していただきたい部分です。もちろん本人が変わらないと企業も理解をしづらいですが、大阪でも、もっとそういうことを伝える場、話せる機会が必要ですね。

西澤 弘太郎 院長

2015年に西梅田こころとからだのクリニック開院

西梅田こころとからだのクリニック

最寄り:大阪メトロ 西梅田駅(JR北新地駅、大阪駅からも徒歩圏内)
心療内科 精神科 内科
リワークプログラム、カウンセリング有
※取材は2021年2月に行われました。西澤先生は多くの利用者とともに同年12月の放火事件で帰らぬ人となりました。ご冥福をお祈りいたします。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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