内定おめでとうシリーズ①「自分のことを、ポンコツだと思っていた」~障害者枠を選んだ理由~

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Kaienの藤です。不定期で「内定おめでとうシリーズ」を始めます。その名の通り、Kaienで訓練を修了されて、これから就職をしていく方に、これまでのことを振り返っていただくシリーズです。今月はKさんにお話をうかがいました。


Kさん(30代後半・男性)
高校卒業後、一般枠で、ゲームショップの店員を9年間勤めたのち、消防設備点検の仕事や、看板加工の仕事などで離転職を繰り返す。あまりにもミスが多かったので、受診に至る。Kaien入所後は、一般枠と障害者枠の就職活動を並行して実施し、障害者枠を選択。2016年2月から、特例子会社にて事務職に就く予定。

内定おめでとうございます。まずは、率直なお気持ちをお聞かせください。

Kaienに入って10か月くらい経つのですが、「ようやく決まった」という気持ちと、「今までしてきたことが実を結んだ」という気持ちの両方です。これまでの人生の中で、初めて真剣に就職活動をした気がしています。これまでは、公共の訓練校に入って、そこでの就活の流れに乗ったり、人のつてだったりで就職をしてきたことがほとんどでした。
今回は、これまでよりも能動的に就職活動が出来たように思います。それは、ある程度は、自分がどういう人間なのかがわかってきたからなのかな、と思っています。自分の得手不得手がわかると、「割り切り方」も見えてきて、得意なことは得意だし、苦手なことは仕方ないと思えるようになりました。

今回、Kさんは障害者枠を選択しましたが、その理由を教えてください。

僕の場合、初めは障害者手帳が取れるかどうかがわからなかったので、Kaienに来る前は、そもそも障害者枠を選べるか、わからない状態でした。ただ、Kaienに来て、自分を見つめなおしていくうちに、自分の特殊な部分も見えてきたことが大きいです。障害者枠を選ぶことに抵抗がゼロというわけではなかったのですが、だんだんと心境が変化していきました。
心境の変化に関しては、Kaienの、障害者枠で働いている修了生の方を見ていて、あまり自分と大差がないなと思ったことが理由です。もしかしたら、先輩たちも葛藤があるのかもしれないけれど、障害者枠を使えば、以前から興味のあった事務職にも就ける可能性もあるし、長く働き続けることができるのであれば、それはひとつの手段だと思いました。

Kさんの場合「何が何でも一般枠」と思うのであれば、不可能ではなかったと思います。また、実際に、Kaienに来てからも、一般枠での就職活動を実施しました。一般枠を選ばなかった理由を教えてください。

これまで、一般枠で失敗ばかりだったということが最大の理由です。僕は、あまり深く考えるタイプではないので、いいようにとらえがちなところがあります。その結果、自分が思い描いていた職場と、ギャップが大きいということがありました。これまでの最大のギャップは、消防設備点検の仕事です。単純に、家に入って何か調べるのかな、くらいのイメージだったのですが、毎回現場も変わるし、スピード感にもついていけず…。向いていないのかな、という気持ちと、もっと頑張らなきゃ、という気持ちの両方がありました。でも、やっぱりとっさの判断だったり、臨機応変な対応は苦手です。
僕は、診断名としては、適応障害とADHDなのですが、仕事の得手不得手でいうと、ある程度何回か繰り返せばできるようになるかな、というところはあります。一般枠で働いていたころは、現場ごとの判断をしなくてはならなかった。しかし、訓練であれば、毎日同じ環境や、同じ人と接するので、経験値がためやすいということが良かったです。

Kaienの訓練の中で、印象的だったことを教えてください。

オンライン店舗(注:Kaienの職業訓練のプログラム。実際にネットで販売もしています)の店長業務です。それまでの仕事の中で、人をまとめるリーダー業務についたことはありませんでした。けれど、実際に店長業務をしてみて、メンバーが思うように動いてくれない。そのことによって、かつての自分の上司からの見え方がわかったような気がしました。

オンライン店舗の業務用ノート。ミーティングの前に、今日するべきことを整理するのが日課でした。

Kさんにとって、このKaien生活は、どのような位置づけでしたか?

自分を掘り下げる時期だったと思っています。僕は、自分のことを、言葉は悪いんですけれど、ポンコツだと思っていたんです。それまでの仕事でも、叱られてばかりでした。自分が叱られるのは、努力が足りないからだと思って、あまりできない原因を考えないようにしていたんです。自分を卑下して、思考停止することの繰り返しでした。
けれど、今は、自分のことを卑下することはあるものの、出来ない原因は何なのかということを考えるようになりました。また、出来ないのは、人間としての特性だから仕方ないと、ある意味割り切れるようにもなりました。逃げかもしれないけれど、逃げてるだけじゃないなって思います。

「割り切り方」について。そのように思えることは、すごく大事だと思うのですが、Kさんがそう思えるようになったのはどうしてですか?

以前は、できる人に対して嫉妬があったんです。けれど、そういう人もできないこともあるんだってことに訓練を通して気づきました。誰でも能力に凸凹がある。また、そういう人が僕のことを「すごいね」って言ってくれたりすることもあって。オンライン店舗の中で、チームのメンバーが自分のことを必要としてくれることで、自分にも価値があるのかなと思えるようになりました。
以前は、人から自分がほめられても、それを受け入れるのが苦手だったのですが…。自分を肯定すると、自分が自分でなくなるような感覚です。今では、自分を肯定しても大丈夫かなと思います。
すごくできる人を見ても「彼もすごいけれど、自分にもできることがある」とか、「自分もすぐに追いつくとはいかなくても、半年や1年経てばできるようになるかもしれない」と思える。ストロングポイントは伸ばして、ウィークポイントはうすめる。それが「割り切り」なのかなと思います。

最後に、今後の仕事についての期待感と、後輩に対するメッセージをお願いします。

仕事って、お金を稼ぐためだけの手段だと思っていたのですが、やりがいだったり、楽しみがあるといいなと思います。そう思うようになったのは、本当に最近のことです。人に頼られて、結果を出して。僕は、人生って暇つぶしだと思っているんですが、その人生の中で、仕事をすることで暇がつぶれて、かつ人が喜んで、社会に貢献できて、お金も伴えばなお良いです。
また、今訓練に参加をしていて、いろんな人がいます。僕よりも苦労してきた人もいるし、素直な人もいるし、いろいろこじらせている人もいて。だいたい、僕よりも年下の人が多いのですが、Kaienの中でいろんなフィードバックを受けながら過ごしてほしいなと思います。以前、友人で、Kaienを利用した人も言っていたのですが、こういうところを利用できることは本当に貴重なことだと思います。僕も、Kaienに来るまで4か月待ちました。もちろん、自分の成長を一番に考えるべきですし、あせることはないのですが、自分のように苦しんでいる人がいる、その人たちがKaienを利用することを待っている、と思うと、「はやく働こう、就職しよう」というモチベーションになるのかなと思いました。