二次障害があるとどんな特徴が出てくる? ~発達障害と二次障害シリーズ①~

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就労移行支援事業所Kaien新宿の鈴木です。

発達障害*がある人は、生まれながら持っている脳の特性により、周囲の人とコミュニケーションを取ったり、学校・会社といった社会の中で暮らしていくことに難しさを感じる方が多くいらっしゃいます。その困り感の強さが関係するのかもしれませんが、鬱や双極性障害といった精神障害を合わせ持っている方も多い傾向があるようです。Kaienに登録されている2000人余りの方のうち、29%の方が何らかの精神障害の診断があると回答しています。日本での精神障害の生涯有病率が17.2%、12ヶ月有病率が7.2%(こころの健康についての疫学調査に関する研究、2007年)であることを考えると、かなり多い割合です。

先天的な脳機能障害である発達障害と区別して、発達障害のある人が後天的に発症した精神障害のことを「二次障害」と呼んでいます。今回から「発達障害と二次障害」シリーズとして、二次障害を持った発達障害の人にどんな形で働くための支援をしていくかをこのブログで考えていきたいと思います。第1回は、複数の国立医療センターの小児科外来で指導員として10年以上勤務し、二次障害のあるお子さんや成人の発達障害の方々と関わってきた経歴を持つKaien秋葉原サテライトスタッフの西河に話を聞きました。

 

日々の職業訓練の中で、二次障害がある訓練生について何か気づいていることはありますか?

私が勤務しているKaien秋葉原サテライトは、当社の就労移行支援の中でも印刷業務などの軽作業プログラムに力を入れています。またガクプロ(当社大学生・専門学校生向けサービス)を利用していた就労未経験の方が全体の半数くらいいらっしゃることもあり、「働く」ということの基礎からお伝えしているという特徴もあります。こういった拠点の性格から、当社の他の拠点で訓練を受けていたけれども、訓練のスピード感についていくのが難しく、秋葉原サテライトに移籍してくる訓練生もいらっしゃいます。そういったケースの中には原因として二次障害が隠れている場合もあります。2012年に当社が就労移行支援を始めた時には「純粋な」発達障害の方が多かったように思いますが、現在6拠点で150名以上の方に利用いただいており、利用者が増えるに従って二次障害を抱える方も増えてきた印象があります。

どんな二次障害を持った方がKaienの職業訓練にいらっしゃっていますか?

鬱、統合失調症、双極性障害、強迫性障害など様々です。(筆者注:診断名としてはうつが最も多く17%、適応障害が4%、双極性障害と強迫性障害がそれぞれ3%、不安障害が2%、統合失調症が1%)いろいろな症状の方が一堂に会することもあり、それぞれ適切な働きかけ方が違うため、支援の際に大変さを感じることもあります。
二次障害がある人は、発達障害のみある人とはまた違った困難・苦痛を抱えています。

二次障害がある方の職業訓練での振る舞いには何か特徴はありますか?訓練の中で二次障害の有無に気付くポイントはありますか?

私が二次障害が隠れている可能性を考えていく際のポイントとしては2つあります。1つは「勤怠」です。訓練で勤怠が不安定になる時には、初めはがんばって通おうとしていたけれど、段々続かなくなって休みがちになっていくことが多いのですが、一部の方は、訓練開始した当初から勤怠が乱れていたりと特徴的なパターンを示すことがあります。このような時には二次障害を疑っていきます。2つ目は「思考の固さ」です。ゼロサム思考で、完璧にできなければ失敗とみなしてしまうため、それであれば最初から行動しないという傾向がある方がいらっしゃいます。他にも、この企業しか受けませんなど志望条件をかなり限定した範囲で設定していてそれ以外は検討もできないという方もいらっしゃいます。許容できる状態が極端に狭く、キャパシティの「コップが小さい」「コップの水があふれそう」な場合も鬱や強迫性障害などの二次障害を疑います。

二次障害を持っている方と持っていない方の違いについてもう少し詳しく教えてください。

二次障害のない発達障害の方は基本的に素直です。単純にどう振る舞ったら良いのか知らないだけで、こうするともっと良くなりますよとお伝えすると、その指摘を素直に受け入れて変えていこうとします。またとても真面目で、与えられた課題に対して一生懸命取り組みます。考え方もとても純粋で、母のためにお仕事をがんばりますなど今時珍しいくらいの家族への思いを語る方もいます。
一方で、二次障害のある発達障害の方は他人からの意見を受け入れることが難しいことがあります。何か難しい事態に直面した場合に、自分の振る舞いを変えようとするというよりは、周囲の人間や環境を変えようとする場面も見られます。また与えられた課題に取り組めない、自分が納得しないとできないという訴えがあることもあります。人間関係も距離を取りすぎていて他人のことを信じることができなかったり、自分の意見を肯定してくれる人のところだけに寄り添っていくことで、家族や友人との関係がうまくいかなくなってしまったりと、結果的にご本人がつらい立場になってしまうようなケースも見受けられます。
このインタビューの続きを、次回以降このスタッフブログで引き続きお届けします。今後は二次障害のある人とない人での支援方法の違いや、二次障害から回復し内定を勝ち取った事例などを紹介していきたいと思います。
Kaienが考える二次障害についてはウェブサイトでもご説明しています。
二次障害を持ちながら働いている先輩方もいらっしゃいます。発達障害をお持ちの方の就労支援について詳しくはこちらをご覧ください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます