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発達障害の人の就業実態(平均年収は236万円)

就業実態調査2020 ~発達障害の600人に聞きました~ 其の参就業実態調査社長ブログ

発達障害の人に年1回ご協力いただいているKaienの「就業実態調査」。今年は約600人の方に回答いただきました。

過去の記事「就業実態調査」 – 発達障害の方のための就職応援企業 (kaien-lab.com)

今回は「就業実態調査」の本丸。発達障害の人たちがどのような環境で就業しているかを、主にお金の面からとらえます。

進む 障害者雇用での正社員登用

障害者雇用で働く人たちは248人から回答がありました。そのうちの契約形態を見ていきます。4割が正社員、6割が契約社員というデータです。

前回の「就労移行支援 Before/After」で見た通り、就職直後は1割弱しか正社員はいませんので、正社員登用が徐々に進んでいることになります。

就労移行支援 Before/After(2020年版)

 

登用は3年以内が8割超

では障害者雇用で正社員登用はどのペースで行われているかというのが次のチャートです。

今回の回答者で正社員登用があった会社の場合は入社時は2割もいないものの、数年以内まで含めると82%という数字。一気に正社員化率が高まります

前回も障害者雇用の契約社員の多くは不安定ではないことをお示ししましたが、上のチャートでもそれが示されていると思います。

2020年 発達障害の人の平均年収は『236万円』

今回のアンケートに答えていただいた方の内、現在仕事をしている方(317人)の平均給与は236万円でした

昨年の調査では推定値ではありましたが、ほぼ同じ約240万円という数字でしたので、ここ最近の発達障害の方の平均年収と考えてよいかと思います。(月給換算でほぼ20万円です。なお手取りではなく、額面の給与水準です。)

2019年版 発達障害 就業実態調査から② 給与水準を性別・年齢別・職種別で考察する

この数字は地方に行くとそれなりの余裕も考えられる数字かもしれませんが、今回の回答者は9割は首都圏と関西圏。つまり最低賃金が高く賃金レベルが高いものの、賃料をはじめとした生活費がかかる地域ですので、あまり余裕がある生活ではないのが実際だと思います。(もちろん家族と同居しているかどうかも関連すると思いますが、それについては次回触れたいと思います。)

障害者雇用「一般枠に比べて給与が低い」わけではない

次に一般雇用と障害者雇用について、給与の差を見ていきましょう。まずは月給の分布です。

非常に頻繁に「障害者雇用<一般雇用」ということが世間では言われていますが、それは必ずしも正しくはありません。月給で見ると確かに30万円を超えるような給与で働いている人は一般雇用が多いですが、それ以外の部分ではそれほど変わりはありません。

まずバイトをしている人が一般雇用では多いので、月給10万円以下が多いです。これは「フルタイムの給与」を考えるとやや統計をゆがめているかもしれません。しかし、その10万円以下を除いた場合、給与差はわずかなものです。それが下記のチャートです。

月給では1.4万円の差、賞与では3万円の差、年収では21万円の差となります

月1~2万円の違いが大きいか小さいかは、主観によるかもしれませんが、障害者雇用になると低賃金しかないというのは明らかに誤っていて、わずかな差しかありません。(しかも一般雇用の数字は、少数の月給30万円の人たちによって引き上げられている側面があります。)

一般雇用か障害者雇用かではなく、仕事の量・種類・幅を増やすかどうか

もう少し解説をすると、「社会レベルでは一般雇用のほうが給与レベルが高い仕事があるが、個人レベルで見た時には(例えば●●さんの場合には)一般雇用でも障害者雇用でもそれほど給与は変わりません」というのが正しい説明になるでしょう。

同じ仕事(量や種類・幅)をしている限りは一般雇用でも障害者雇用でもそれほど変わらない。給与を高めるためには一般雇用でも障害者雇用でも、まずは仕事の量や種類、幅を増やさないといけない。ただし障害者雇用はそのあたりに配慮を求めているところなので、気持ち給与が下がるのは「同一労働 同一賃金」の原則がありますので合理的ともいえるはずです。

もちろん私個人的にも障害者雇用のレベルが十分納得できるといっているわけではなく、もっと給与レベルは(発達障害の人だけではなく)全体的に引き上げられる社会を目指すべきだと思いますが、一般雇用と障害者雇用のところの給与差で、支援者も当事者も家族も誤解だらけなのでややくどく書かせていただきました…。

4割は昇給無し…

今回、一番残念だったチャートが下。

たしかにデフレスパイラルをようやく脱したものの、今度はコロナの沼にはまり込み、今後の日本も社会全体で昇給を期待できる状況ではないですが、発達障害の人の4割は昇給がなく働いているというのが現状です。(逆に言うと6割は昇給できているということで、ポジティブに受け取るべきかもしれませんが…)

ただし下記のチャートは9年間一度も昇給できていない人も含んだ数字でして4割は大きく見えます…。発達障害の人は職場でスロースターターだと思いますので、出来ることが増えた時は給与が増えるようになるとよいのですが…

年単位の昇給平均は数千円程度

最後にチャートは無いですがもう一つ昇給に関するデータをお示しします。

繰り返しですが一つ上のチャートは現職での昇給の有無であり、今年に限ったチャートではありません。アンケート結果から1年での昇給平均を計算してみたのですが、その結果が「2,513円/月」でした。つまり、発達障害の人の昇給幅は月給で2,500円ほどということです。

なお、昇給をしていない人を除いた額は「4,146円」。上がっている人は約4,000円は月給が上がっています。年収換算だと5万円ほどですね。

もし年収240万円の人が今のペースで昇給していったら、年収が300万円の大台に乗るのは、12年かかるということになります。長いと思うか、短いと思うか…。いかがでしょうか。

回答者の属性

最後に今回回答いただいた方の属性を見ていきます。

6割が障害者雇用で働く人たちでした。なお失業・無職の方も2割含まれています。(その方々は直近の就業状況について答えていただいています。)

下は無職の方を除いたチャートです。

職種は、事務系が64%。

障害者雇用に限ると、事務系は70%を超えます。障害者雇用のほうが職種にバリエーションが低いのがこのチャートでもわかります。

 

いかがだったでしょうか?このシリーズ 。年末年始にまだまだ続きます。お楽しみに!

 

文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS大学生向けの就活サークル ガクプロ就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴

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