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大人のアスペルガー症候群

主な特徴・強み・弱み、向いている仕事・職場、コミュニケーション力を磨くには?ASD・アスペルガーコミュニケーション

「アスペルガー症候群」は発達障害の一つであり、実は過去の診断名です。現在の医療現場では「自閉症スペクトラム」を用いることとなっています。しかし一般的にはまだまだ「アスペルガー症候群」の通りが良く、「自閉症スペクトラム」よりも頻繁に使われます。ここでは大人の「アスペルガー症候群」の特徴と働くための道筋を考えていきます。なお、「アスペルガー症候群」は「AS」と略されます。

「アスペルガー症候群」の主な特徴

「アスペルガー症候群」の人は、「3つ組みの障害」と言われる(1)社会的に適切に振る舞うことの難しさ、(2) コミュニケーションを円滑にすることの難しさ、(3) 「こだわり」が強く柔軟に想像・思考することの難しさ、が特徴です。

「3つ組みの障害」

1979年、イギリスの児童精神科医ローナ・ウィングが、「ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群・広汎性発達障害)」を含む自閉症の人が持つ特徴として「ウィングの3つ組」を提唱しました。

「3つ組の障害」(自閉症の人が持つ特徴「ウィングの3つ組」)
社会性の質の違い 周囲の人とかかわる時に適切にふるまうことができず、相手と関係を築いたり、築いた関係を維持していくことが難しい。
コミュニケーションの質の違い 相手が言っていることや感じていることを理解したり、気づくのが難しい。また自分が言いたいことや感じていることを相手にわかりやすく伝えたり、表現するのが難しい。
想像力の質の違い 自分が見たり予想していた以外の出来事や成り行きを想像したり納得することが難しい。自分の興味のあることや心地よいパターンの行動に強い「こだわり」があり、想定外の行動を取ることに抵抗を示す。

 

「3つ組の障害」は、アスペルガー・自閉症スペクトラムの理解にわかりやすい

「3つ組の障害」は、アスペルガー・自閉症スペクトラムの理解にわかりやすい

「自閉症スペクトラム」との違い

アスペルガー症候群」は、2018年現在でもまだまだ一般的に使われていますが、医学的には「自閉症スペクトラム」に統合されています。診断されるときに使われる基準(DSM-5と言われます)が2013年に改訂された影響です。基準変更前に「アスペルガー症候群」と診断された方のほとんどは現行基準では「自閉症スペクトラム」と診断されるでしょう。

診断基準の変化による診断名の変化
過去の診断名
(1994 DSM-4 / 1990 ICD-10)

広汎性発達障害(PDD)

  • アスペルガー障害 / アスペルガー症候群
  • 特定不能の広汎性発達障害
  • 小児自閉症
現在の診断名
(2013 DSM-5 / 2018 ICD-11)
自閉症スペクトラム(ASD)

※ DSM-5 = 「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」アメリカ精神医学会作成

「アスペルガー症候群」は通常IQが”正常域”、つまり知的障害がないケースに使われます。知的障害がある場合(IQが概ね70以下)は知的障害を伴う「自閉症スペクトラム」となり「カナー症候群」と言われることが一般的です。さらには「高機能自閉症」という診断名もかつて使われていました。これは言葉の遅れが見られたものの、知的障害がない「自閉症スペクトラム」の方を指すことが多かったようです。つまり、「アスペルガー症候群」と「高機能自閉症」の共通点は「3つ組の障害」がある事と知的障害がないこと。違いは子どもの時に言葉の遅れがなかった方が「アスペルガー症候群」ということとなります。

3つ組の障害 + 知的障害がない アスペルガー症候群
3つ組の障害 + 知的障害がない※ + 言葉の遅れ(幼少時) 高機能自閉症
3つ組の障害 + 知的障害がある カナー症候群

※ IQが概ね70以上

「カナー症候群」、「高機能自閉症」、「アスペルガー症候群」いずれの診断名であったとしても、すべて「自閉症スペクトラム」の一つであり、発達障害の一つであるということには変わりありません。IQのレベルは違いますが、「3つ組の障害」が認められるという共通点があるためです。発達障害の簡単な分類は以下の図をご覧ください。

発達障害

ASD自閉症スペクトラム
[ 旧診断名 ]
アスペルガー症候群
高機能自閉症
カナー症候群

ADHD注意欠如多動性障害

LD 学習障害 /
SLD 限局性学習症

DCD 発達性強調運動障害

知的障害

「ADHD」との違い

「ADHD(注意欠如多動性障害)」の特徴としては、「不注意・多動性・衝動性」の3つがあげられます。症状のあらわれ方は人それぞれで、「不注意が気になる人」、「多動性・衝動性が気になる人」、「どちらも混合している人」の大きく3パターンに分けられています。こちらも「3つ組の障害」と同じく、最新の診断基準では区別はしなくなりましたが、ADHDの傾向を知るためには分かりやすい判断軸です。

「アスペルガー症候群(ASD)」の主な特徴
  • グループでの業務・活動が苦手
  • やり取りがうまくかみ合わない
  • 自己流で物事を進めたがる
「ADHD(注意欠如多動性障害)」の主な特徴
  • 細かい注意を払うことができない。
  • 注意を持続しつづけることが難しい。
  • 話しかけられても聞いていないように見える。
  • 順序立てて課題を進めることが難しい。
  • 忘れる・抜け漏れることがある。
  • そわそわと手足を動かしたり、座っていても、もじもじ動いてしまう。

つまり、「不注意・多動性・衝動性」といった特徴がみられると「ADHD」「3つ組の障害(「社会性の欠如・コミュニケーション力の弱さ・こだわり」)」が見られ、かつ「知的障害」がない場合は「アスペルガー症候群」と分類できます。ただし、実際は「アスペルガー症候群」と「ADHD」は重なっていることが多く、診断名には振り回されないことが重要です。

「アスペルガー症候群」の「強み」と「弱み」

「アスペルガー症候群」の「強み」と「弱み」は表裏一体です。つまり「空気を読む」ことが苦手な特徴は多くの仕事では「弱み」になりえますが、ある特定の仕事では「強み」にもなりえます。また「こだわり」があるというのも、マイナスに働く職場もあれば、プラスに働く場合もあるでしょう。具体的に「強み」、「弱み」がでる状態を考えてみましょう。

強み
  • 周囲の意見などに流されず、数字や出来事から事実のみを抽出する力
  • 大きな意味付けよりも、ルールに定められた細部を意識して、緻密な作業をコツコツする力
  • 数値・文字情報など見える化されている情報を正確に迅速に処理する力
弱み
  • 周囲と協調して働く
  • 全体感を見て働く環境、数字・文章よりも人の感情や場の雰囲気をくみ取る

職場や職種とのマッチングが何よりも重要なのが「アスペルガー症候群」の特徴です。

こだわりと限定的な社会性はプラスに働くこともある

こだわりと限定的な社会性はプラスに働くことも意外に多い

「アスペルガー症候群」に「向いている仕事」

このため、以下のような職種は「アスペルガー症候群」の方に当てはまりやすい仕事・職種になります。

  • 経理・財務
  • 法務・情報管理
  • プログラマー・テスター
  • コールセンター
  • テクニカルサポート
  • 電化製品等 販売員
  • CADオペレーター

「経理」や「法務」、また最近重要度が増す「個人情報の管理業務」などは、法律や条例、業界団体等のルールに基づいて動くことが必須ですアスペルガー症候群の特徴が活かしやすい分野と言えるでしょう。IT業界は「アスペルガー症候群」の特性のある人でも働きやすいと言われる分野です。確かにプログラマーやテスターは特性にフィットする場合が多いでしょう。ただし同じIT業界でもお客様との抽象的なやり取りのあるシステムエンジニア(SE)は向かないことがあるので注意が必要です

「コールセンター」や「テクニカルサポート」、「電化製品の販売」など、人との接点が多い部分が向いている仕事に挙げられていることに驚いた方もいるかもしれません。たしかにコミュニケーションがある程度求められる仕事であることは確かでしょう。しかし、特に言葉が流ちょうなタイプは、マニュアル通りに進めたり、豊富な知識を披露できる仕事はマッチングが良い事例が多くあります。特に本人のこだわりの分野と重なると天職にもなりえるでしょう。

「CADオペレーター」は視覚的な情報処理が得意なタイプにはお勧めです。「アスペルガー症候群」の方は、言葉で考えるタイプもいますが、画像・映像で考えるタイプも一定程度存在します。そういったビジュアルシンカーにとっては設計図などを作成するためのCADの仕事や、画像・映像加工の仕事は特徴が十二分に生かせる世界になりえます。ただし、CADの「オペレーター」としたのは、映像・画像・設計などの世界でも上流工程でお客様との交渉が発生する分野は苦手な人が多いため、自分でコツコツできる、タスクがわかりやすい作業員(オペレーター)として動くことにマッチングを感じる方が多数派だからです。

視覚優位のアスペルガー症候群の人には画像加工などがお勧め

視覚優位のアスペルガー症候群の人には画像加工などがお勧め

コミュニケーション力を磨く方法

「3つ組の障害」の中で唯一プラスの方面に働かない特性が「コミュニケーション力」と言えるでしょう。どうしてもアスペルガーの特徴の中で足を引っ張りがちですので、コミュニケーション力を高めることが就職を安定させる近道になりえます。どのようにしたら、相手の意図を会話から読み取り、自分の気持ちや状況を伝えられるようになるのか。アスペルガー症候群の方が、現代社会で仕事をするうえで最も重要ともいえるコミュニケーションを磨く方法を考えます。

企業が求めるコミュニケーションは「発信」ではなく「受信」

企業の人事担当に「採用したい」と思われるためには、どのようなコミュニケーション能力を高めればよいのでしょうか。特に「アスペルガー症候群」の当事者の方とお話をしていると、「どのようにすればしゃべりの技術が高まるか」、「語彙が多くなるか」、「吃音(どもり)の傾向を少なくできるか」という「発信」のところに気を付けていらっしゃる方が多いのが気になります

実際、職場で求められるコミュニケーションはまずは「受信」です。つまり上司や同僚、そしてお客様から伝えられる内容を理解するということになります。受信力を高めないことには、仕事の内容を理解することも、作業を迅速に進めるにも、その後相談や質問をするにも、的外れなことになってしまいがちです。

受信力を高めるために

受信力を高める方法は大きく分けて3つあります。

1.メモを取る事、そしてまとめる事

まずは手書きでもPC/タブレットなどIT機器を使ってもよいですのでメモを取ることです。人間は蓄えられる量には限界があります。特に口頭で指示されたことを記憶しておくことが「アスペルガー症候群」の方は苦手です。やり過ぎでないか?と周囲から言われるぐらい、メモを取っておくことが重要です。ただし、メモの取りっぱなしはいけません。手が空いた時間があったら内容をまとめておくことが重要です

2.復唱・確認すること

指示を受けた時に復唱・確認することは受信時のズレを防ぐ最も効果的な方法です。分かった気にならず、上司やお客様が言った内容を繰り返す、あるいは自分で理解したことを確認することはミス・抜け漏れを事前に防げます。チェーン店のレストランなどに行くと、注文時に復唱を必ずされるでしょうが、あの行為は受信ズレを防ぐための王道ともいえます。

3.メール等の文字情報を使う事

そもそも受信がズレがちな口頭での指示を減らし、メールなどの文字情報に統一してもらうということも重要でしょう。「アスペルガー症候群」の方は文字情報や数字の情報を字義通りにとらえることはしっかりと出来ますので、自分の得意分野でのやりとりを増やすということが対策となりえます。

アスペルガー症候群の方は①メモを取る ②復唱する ③文字情報でやり取り を徹底しよう

アスペルガー症候群の方は①メモを取る ②復唱する ③文字情報でやり取り を徹底しよう

「アスペルガー症候群」の人が定着しやすい職場

良い意味で変化の乏しい職場へ

好調な業界・企業ほど人の出入りが激しく、求められるスキルも年々変わり、スリリングな社会人生活になるものの、残念ながら「アスペルガー症候群」の方には向かないことが多いでしょう。むしろ他の人からは退屈な、のんびりしていると思われるような企業・職場を目指されることが良いでしょう

周囲の人の変化もなく、職場で必要とされるスキルもそれほど変わらない状態は、アスペルガー症候群の知識を蓄え、パターン化して行動するという特長が生かされやすいと言えます。チェックポイントとしては以下のような職場を目指すとよいでしょう。

定着しやすい職場のチェックポイント

  • 創業が最近でない。十年以上は経過している。
  • 企業規模が小さすぎない。理想的には数百人規模である。
    (大きすぎると部署や環境の大きな変化が起こりえます。)
  • 時代の最先端を行く業種ではない。
    (最近ではフィンテックやAIの業界などは避けたほうが良いでしょう。)
  • 職場の年齢層が若すぎない。
    (ノリが強要されないような環境は避けたほうが無難です。)

変化の乏しい職場は、”昭和的”な義理人情にあつい職場かもしれませんが、一方でサッパリとした人間関係ではなく根回しなどの本音と建前が必要な職場であるかもしれないというのは注意が必要でしょう。

嘘や陰口は、職場では当たり前なことは理解しておく

「アスペルガー症候群」の方はまじめで、不正や嘘が嫌いですし、なかなか見抜けません。本音で社会や組織・人と接している方が多いという美点があります。ただし、あまりにもまじめすぎると、濁流のような企業文化では苦しくなってしまいます。人が親切で裏切りや嘘がなく、予定調和である程度動く、理想郷のような空間でないと気おされてしまう感じです。

出来る限り嘘のない、正直者が多くいる職場を選びたいところですが、残念ながら世の主流派(非アスペ、定型発達者)は嘘や陰口は日常です。また求人票などから正直者が多い職場を探すのは現実的に不可能です。人間性の高い職場に出会えた方はラッキーです。定着しやすい職場の第一条件に当てはまるところを探せたからです。しかしすべての「アスペルガー症候群」の方がそのような幸運に巡り合えるとは限りません。嘘や陰口があっても、ご自身が良い意味で理想の職場を諦めることと、愚痴を社外で言える環境を持つことが必要になってきます。 

すべてがフィットする職場はまず難しいですので、「アスペルガー」の特性上陥りがちな「理想を求め過ぎる」ことに注意し、上手に妥協することを覚えていくとよいでしょう。

嘘や陰口が我慢できない時は、すぐに辞めず、社外で愚痴を聞いてもらうことが重要

嘘や陰口が我慢できない時は、すぐに辞めず、社外で愚痴を聞いてもらうことが重要